コロナ後の世界
文藝春秋7月号の特集は「コロナ後の世界」だった。そのなかにマイクロソフトの創始者ビル・ゲイツが4月にイギリスの「エコノミスト」誌に掲載した文の邦訳があった。タイトルは「ワクチンなしに日常はもどらない -ワクチン開発のためなら数千億円を無駄にしてもかまわないー」というもの。
氏は新型感染症のリスクについて長年警鐘を鳴らしてきて、すでに十数年前に「今後数十年で1000万人以上が死ぬとすれば戦争ではなく、ウイルスで、いま世界は密接に結びついているので、世界中の大都市に瞬く間に感染が拡がる」と予言していた。そして氏は20年以上にわたってウイルス対策に取り組んできたが、このすべての力をこの度の新型コロナ対策に投じると表明。なかでもワクチン開発に注力し、開発の時間を短縮するために、期待される7種類のワクチン開発への投資を決断、もし選抜から漏れたワクチン候補に費やされる数十億ドル(数千億円)が無駄になっても感染症が収束し、経済活動が戻るなら理にかなっているとしている。
そして最後に、2021年からの数年間は1945年以降と似通ったものになるかもしれない。今の状況は1942年11月10日、イギリスが地上戦の初勝利を収めた際、ウィンストン・チャーチルが演説で言い放った言葉「今は終わりではない。これは終わりの始まりですらない。しかし始まりの終わりかもしれない」と締めくくっている。
やはり世界を動かす人の先見性と決断は違うと改めて感心した。