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2016年3月

2016年3月28日 (月)

ナンニ・モレッティの「母よ!」を観る

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渋谷の人混みに圧倒されて、おそらく映画館も混んでいるかも、と行ってみたら、土曜日の午後なのに場内は10人いるかいないか。驚きました。

親の終末期をどう迎え、支えるか。自分の生き方は…。主役の女性映画監督を演じるのはマルゲリータ・ブイ。ナンニ・モレッティはその兄の役どころ。母の介護で仕事や生活を変えざるを得なくなったふたり。兄は仕事をやめ、妹は恋人と別れる。高齢社会が抱える問題は身につまされる。冷静沈着な兄。一方撮影現場と病院を行き来するマルゲリータは仕事や母と娘の間でも齟齬が生じ、自分自身に苛立つ。モレッティはこの主人公に自分のメッセージを色濃く反映させているようだ。

画面は現実から過去へ、夢のなかへ、と移って戸惑うが、それは彼女の心の中に折々に浮かび上がる思いだということが、しだいに観る者にも伝わってくる。ハリウッドからやってきたジョン・タトゥーロ演じる俳優役が異質な波長を醸し出して、そこがいかにもナンニ・モレッティ的で、暗い内容になりがちなところにユーモアとメリハリをつくっている。

ラテン語の教師をしていた母親が病床のベッドで子や孫を静かに見守る優しさがすばらしい。母の死後、教え子が「あなたのお母さんは私たちにとってもお母さんだった」と語る場面には思わず涙した。とにかくマルゲリータ・ブイの演技が抜群。(ル・シネマで)

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旧前田侯爵駒場本邸を見学

3月26日、駒場公園にある旧前田家の洋館で講演会があった。演題は「第13代加賀藩主・前田斉泰(やすなり)の能登巡見の旅」。講師は能登の語り部、藤平朝雄氏。嘉永6(1853)年、前田斉泰公が700人のお伴を引き連れて旅した能登巡見22日間がどんな旅であったかを、スクリーンに画像を映しながら、まるで見てきたかのごとく話され、退屈しなかった。江戸楽会として参加。

講演後はボランティアガイドさんによる洋館、和館の見学。建物の由来についてはチラシにこうある。「この建物は、旧加賀百万石前田家の第16代当主前田利為(としなり)侯爵の本邸として昭和4(1929)年に技術の粋を集めて建築され、当時東洋一の邸宅と称されました。基本計画は、東京帝国大学教授であった塚本靖、設計は宮内省の担当技師であった高橋貞太郎が担当し、駒場の田園の野趣にあわせたイギリスのチューダー様式を取り入れています」。洋館ながら日本の伝統的文様もとり入れてあり、しっとりした落ち着きが感じられる。細部まで丁寧な造りで、匠の技が見事。当主は洋館2階を暮らしの場にし、和館は外国からのゲストのために造られたそう。戦後一時GHQに接収され、昭和39(1963)年に東京都の所有となった。

花冷えの日だったが、洋館から外を眺めると、桜が三分ほど咲いて、三々五々人が集まって賑わっていた。入場無料。一見の価値あり。

渋谷にでると、世界的に有名になった例の交差点の人のすごさに圧倒された。土曜日のせい? 春休みのせい? いや東京の繁華街はどこも人で溢れている。予約していた鹿児島料理の店で、8人で食事、おしゃべり。

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2016年3月25日 (金)

四万温泉に行ってきた

四万(しま)温泉まで安くて便利な高速バスがあったけど、車に弱い友が一緒だったので、JRで中之条まで行き、そこからバスで40分。川の音だけが聞こえる静かな温泉町だった。小さな町なのに温泉旅館が多いのに驚く。営業が成り立つのかしらと心配になる。泊まった宿も最新の設備を整えていて維持が大変だろうなとつい思ってしまう。「千と千尋の神隠し」の湯屋のモデルになったといわれる旅館があって、若い人たちが写真を撮っていた。

四万川の水は透明で魚が棲めないらしい。温泉も同じく透明。小倉の滝、桃太郎の滝、小泉の滝、と滝があちこちにあった。

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2016年3月19日 (土)

映画「夏をゆく人々」「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」を観る

Photo_22本ともいい映画だった。「夏をゆく人々」の原題は「Le Meraviglie」(驚くべきこと)。イタリアのトスカーナの田舎が舞台であること、イタリア語が聞きたかったことが観た動機。養蜂家一家のひと夏の出来事を描いている。4人姉妹の長女ジェルソミーナはしっかり者で働き者。妹たちはまだ幼い。頑固で仕事一徹の父親の片腕となって養蜂を手伝う。ある日村にテレビ局の取材が入ったことで、一度も父親に反発したことのなかったジェルソミーナが自分の考える道を選ぼうとする。父娘の葛藤と愛情。ああ、トスカーナの田舎にはこんな家族が暮らしているんだなというリアリティがあった。実際、この映画には若い女性監督の実体験が深く投影されているらしい。それほど難しい会話もないので、イタリア語が耳に心地よかった。

 

もう一本はおまけで観た映画だったが、これがまた面白かった。シカゴの青年がオークションで15万枚という大量の旧いネガフィルムを入手する。ヴィヴィアン・マイヤーというこのフィルムの撮影者・持ち主がどういう人物だったのか、ウェブサイトで検索しても全くヒットしない。しかしブログで何点かを紹介してみると、たちまち写真に魅了された人たちからすさまじい反響が起こった。 わずかな手掛かりをもとに、ヴィヴィアン・マイヤーを探しもとめていく過程を青年自らが監督しているドキュメンタリー。Photo


生前の彼女を知っている人を見つけ、次々とインタビューしていくが、浮かび上がってくる人物像は奇人変人。だが画面に映し出される彼女の写真はじつにすばらしい。何気ない日常を温かく鋭く切り取った作品はパリの写真家ロベール・ドアノ―以上だ。なのに、なぜ、彼女は生前に一度も世に作品を発表しようとしなかったのか。謎のままだ。 この映画で教えてもらったのは、写真作品というものは、写真家自身が現像焼き付けしたものでなければ価値を認めない(一部の例外を除く)という事実。MoMAのような大きい美術館に買い取りを持ちかけても、相手にしてもらえなかったらしい。青年は行動を起こす。ニューヨーク、ロンドン、とあちこちで写真展を開き、大人気を勝ち得ていく。これから先、ヴィヴィアン・マイヤーはどう評価されていくのか、美術館の対応は?  興味深い。(早稲田松竹で)

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2016年3月14日 (月)

川本三郎著『東京抒情』を読む

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様々な雑誌に書いた「東京」についての文章がまとめられた一冊。「歩く東京」、「思い出の東京」、そして小説や映画、絵画などに「描かれた東京」。懐かしい東京の姿。とくに銀座については興味が尽きない。銀座界隈には数寄屋橋、京橋、三原橋、万年橋、新橋…、と橋があり、川が流れていた。アドバルーン、デパート、画廊、路地裏、そして映画黄金時代の銀座など。いいな、いいな、と読みすすむにつれ、歩くことの好きな著者は、東京の川沿いを荷風さんのように歩く。なかでも東京の西の川、残堀川を見つけた驚き、その川を辿る旅がいい。地図も入っていて歩きたくなる。以前、この人の『荷風好日』の文庫本を手に荒川放水路に沿って歩いたことがあった。

作家が住んだ町、小説の舞台も満載だ。たとえば「文士が体験した関東大震災」では、永井荷風、谷崎潤一郎、芥川龍之介、佐多稲子、林芙美子、井伏鱒二、北原白秋、菊池寛、そして映画監督の黒澤明などのエピソードが惜しげもなく出てくる。 この人の書く「荷風」が好きだ。この本にも荷風さんが頻繁に登場する。何だかとても得をした気分になった。

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2016年3月 7日 (月)

又吉直樹×堀本裕樹『芸人と俳人』を読む

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文芸誌「すばる」に2012年から2年間連載されたものの単行本化。お笑い芸人の又吉さん(昨2015年、『火花』で芥川賞を受賞、すでに作家先生だが)が俳人の堀本さんの弟子になって、俳句の手ほどきを受ける形。俳句は怖いけど面白いという又吉さんを相手に、俳句の基本、俳句との親しみ方、句作、そして句会、選句、吟行までを丁寧に解説・実践していく。対談形式の堀本さんの進め方がうまいため、又吉さんの持ち味がよく出ている。

近ごろ私も、五七五日記と名付けた俳句でも川柳でもない17字文を作っているので、ド素人に参考になることがずいぶんあって面白かった。メモしたこといくつか。 ・歳時記を引きまくれ。季語の本意と本情を理解する。 ・朝顔の紺の彼方の月日かな(動詞を節約する 三大切字「や」「かな」「なり」) ・すべて理解できる俳句は魅力がない。違う読み解きがあるんじゃないかという句は光る。 ・ランボーを五行とびこす恋猫や 寺山修司 ・吟行はその日だけで終わらない  ・上田五千石 まねぶ 真似して学ぶ  ・型の中で自在になる。

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2016年3月 4日 (金)

2016 楜沢成明個展+α「雲と山と人と……」を観る

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拝見するのは今年で3回目。ネパール、ブータンの旅の仲間と。楜沢さんの絵は上手いとか下手とかいう評価の域など超えた自在な世界。雲はますます抽象化され、曼荼羅に近づいているように思える。原色が美しい。

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会場のテーブルの上に「規格統一体の実験」という作品があった。楜沢さんの早稲田大学建築学科の卒業制作だという。半世紀以上前の作品。長野の上高地をモデルに、山の好きな人々への山の開発と発展、施設への提案、山の変貌を網羅した壮大なプランを図形化したもの。昔からほんとに山がお好きだったのですね。直線も曲線もすべてフリーハンドで描かれてあった。今のようにパソコンで制作するのとはわけが違う。最優秀作品だったそう。楜沢さんの若き日の熱意が伝わってきました。豊島区立熊谷守一美術館3Fギャラリーで3月6日(日)まで。
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