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2014年3月25日 (火)

安岡章太郎著『私の濹東綺譚』を読む

高橋昌夫氏の文庫解説によると、これは1997年から1年余、新潮社のホームページ「Web新潮」に連載されたものという。そのせいか、一回ごとの内容がコンパクトで、写真や挿絵などもふんだんに添えてある。文字も大きく読みやすい。著者は二十歳のときに初めて荷風の『濹東綺譚』を手にしたことなど、自身の体験に引き寄せて語っている。荷風の女性についての見解などにいくつか首肯できないところもあるが、肝腎要の大きな括りのなかで作品や荷風の人となりを捉えているところはさすが作家ならではのセンス、妙味があっておもしろい。 著者は『濹東綺譚』についてこう書く。「墨田川東岸場末の紅燈街玉の井を背景に、“わたくし”大江匡と娼婦お雪との行きずりの恋情が、夏から秋にかけての気候の移り変わりとともに、まるでひとりでに火が灯り、またそれが果敢なく自然に燃え尽きて終わるさまを描いたものである。 ストーリーは平凡だし、叙述も格別際立ったものであるようにも感じられない。それでいて読み終わると、極めて上質のコンソメ・スープを口にしたような、こくのある味わいを覚えるのである。つまり、このスープには、それだけの元手がかかっており、贅沢な材料をふんだんに惜しみなく使い、さらに手間ひまも十二分にかけて作られたものなのだが、一般読者には到底そこまで読み取れまい。私自身、学生時代に初めてこれを読んだときにはそうだった。……」。 そうです、『濹東綺譚』は年を重ね、読むたびに新しい発見があり、それが喜びでもあります。

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