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2013年9月21日 (土)

大野茂男著『荷風日記研究』を読む

永井荷風は、1952(昭27)年に文化勲章を受けたさい、自分の作品で後世に残る唯一のものが『断腸亭日乗』かもしれないと語っています。荷風は関東大震災、そして東京大空襲、その後も疎開先の明石や岡山で何度も空襲に遭っていますが、いつも肌身離さず持って逃げたのがこの日記です。中村真一郎は「作者永井荷風は文学者荷風という架空な想像上の人物を長い年月をかけて創造したのである」と書いていますが、まことに同感。普通の日記とは訳が違うのです。

その日記を、著者は「人間関係から見た断腸亭日乗」という、登場する人物に焦点を当てて分析しています。学者らしい冷静な見解が基調として流れています。

荷風全集は岩波書店版、中央公論社版、東都書房版とあって、それぞれ加除訂正、複雑ですが、著者はどこがどう違うかを抽出対照して表にしています。家人や勤務先の大学の学生の手も借りたといいますが、その根気のいる作業を成し遂げたことに驚くばかりです。さらに110ページに及ぶ人名索引にも唯々恐れ入りました。荷風さんがこれをみてどう評するかはともかく、荷風ファンにとってはまことにありがたい資料ではあります。1984(昭51)年、笠間書院刊、菊判491ページの労作。

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